うちゅうリブ

メンズリブ的なアプローチで、さまざまな話題を語り合う「うちゅうリブ」の公式ブログです!

男性学研究のための録音・録画協力について

東京工業大学男性学を研究する院生の小埜功貴@KoKi_OnO_さんから、メンズリブの比較調査研究のため、うちゅうリブの様子を録音・録画させてほしいという依頼がありました。うちゅうリブ運営として検討した結果、「参加者全員の同意があること」を条件に、小埜さんの研究に協力することとしました。この記事では、録音・録画の研究利用の趣旨説明と、参加者の皆様へのお願いについて記載します。

参加者の皆様へのお願い

うちゅうリブとしては、参加者が気持ちよく話せる環境の提供を優先して考えています。たとえ研究目的だとしても、録音・録画に抵抗感のある方はいらっしゃるかと思います。参加表明後のメッセージのやりとりに加え、当日のイベント開始前にも意思確認をさせていただきますので、少しでも抵抗感のある方は遠慮なくその旨ご連絡ください。参加者のうち一人でも録音・録画について許可しないという意思が表明された場合は、その回の研究協力をしない形で実施します。うちゅうリブとして研究に協力する条件及び参加者の意思確認の流れは下記の通りです。

録音・録画の同意確認

  • 参加者全員の同意があった場合にのみ、録音・録画を実施します
  • 参加希望を受けてのやりとりと、当日開始前のタイミングで、参加者の録音・録画不許可の意思を確認します
  • 録音・録画を実施した場合も、会の当日から2か月後までに録音・録画利用不可の連絡が参加者からあった場合は、該当の録音・録画データを削除します

以下、小埜さんから録音・録画データの研究利用について案内します。

録音・録画データの利用目的

東京工業大学大学院の小埜功貴(おのこうき)です。このたびの録音・録画の利用目的は、私の主な研究テーマである男性の「弱さ」といった脆弱性(valnerability)の研究を実施することにあります。以下にも記載しておりますが、完全匿名化を施した上で博士論文や学会誌へ提出する論文に使用させて頂ければと思っております。

録音・録画データの秘匿性の担保について

匿名化処理について

録音・録画データをもとに論文を執筆する際、参加者の名前は完全匿名化処理を施します。個人の特定を防ぐため、たとえ参加されるときの名前がニックネームなどであった場合にもこちらで事前に用意している仮名を利用させて頂きます。また、お話される内容が個人を特定できてしまう可能性が考えられる場合には「××」などと伏字として処理するか、または一般化の処理(×フジテレビに勤務していて〜 → ◯メディアに携わる仕事をしていて〜)を施します。研究倫理上、真実と異なる記述は禁止となっているため細心の注意を払いながら秘匿性を順守致します。

ファイルの流出防止について

録音・録画データが格納されたファイルにつきましては、論文に使用するための文字起こしやメモ書きが終了すると同時に消去し、引き続きの保存は致しません。会の開催後、迅速に文字起こしなどの作業を行い安全のため録音・録画データは可能な限り早く完全消去致します。

プロフィール・実績

小埜功貴

1996年生まれ。所属は東京工業大学大学院 博士課程。JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム採択学生。専門は社会学男性学。2021年度に同大学院へ提出した修士論文では男性ジャニーズファンからみられるジェンダーバイアスによる男性の「生きづらさ」をテーマに執筆。今年度からの博士課程では社会的に構築される男性内の”非男性性”や「弱さ」(vulnerability)を主軸とした研究を行っている。大学院での研究を志したきっかけは学部時代に従事していた「レンタル彼氏」という水商売の経験から。

所属リンク(修士課程)

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実績(JST申請書からの引用)

アイドル文化研究会「アイドルオーディション番組リストについての発表」

「日本アイドル学会」の発足を目指すアイドル文化研究会の研究活動の一環で申請者は日本・中国・韓国・欧米のアイドルオーディション番組史リストを作成した。各国および歴史的変遷からみられるオーディション番組の放送形態や審査方法のありかたの考察を通じて、その社会における意思決定のあり方や性規範などといった社会学的分析が可能であるという提示を行なった。

社会情報学会・日本メディア学会「修士論文報告会」

東京工業大学大学院へ提出した修士論文の研究成果を報告。学会の扱う領域に即してここでは男性アイドルを愛好する男性ファン(男性ジャニーズファン)についての研究を中心に発表した。申請者の博士課程における重要概念である「かわいい」という、「弱さ」をありのままに受容する概念についての議論を主に実施した。

東洋経済新報社から出版された『NEO HUMAN』への推薦文寄稿

指定難病ALSを発病した同性愛者のロボット工学者が愛するパートナーとの一生を約束するため、自身をアンドロイド化する試みに挑むノンフィクション作品。申請者の専門領域は男性学で、主に若年男性の「生きづらさ」を中心に調査を行なっているのだが、そこからみえる男性および、ひとの持つ「弱さ」を捉えていることから、この作品で描かれている病といった「弱さ」に向き合う「強さ」を引き出し、推薦文を寄稿した。これまでの先進国を中心とする歴史は人間の限界を突破する「強さ」を獲得するうえで科学技術や経済開発などの営為が実践されてきた。現代においてもさらなる限界突破が目指されているのだが、その一方で人間が本来持ち合わせている限界に立ち返り、「弱さ」とも換言できる制限性のなかで生きることの幸福もまた確かである。その「弱さ」を科学技術によって補いながら愛と向き合っていくピーターの姿に博士課程で調査していく「弱さ」に内在する「強さ」の一端がこの作品のなかで描かれている。

東洋経済オンラインにて「元レンタル彼氏「大学で男の生きづらさ研究」の訳」が掲載

申請者は学部生の頃に学費を稼ぐため「レンタル彼氏」という、一時的な恋人関係をサービスとして提供する性産業に従事していた。この経験をきっかけにジェンダーや男性性といった分野に興味を抱き、大学院へ入学した。この記事は『NEO HUMAN』への推薦文を寄稿するにあたって東洋経済新報社の編集者やライターの方々にインタビューを受け、記事化されたものであり、申請者の以上のような経験と、コロナ禍で顕在化した利他の意義やみなが「弱さ」を抱く当事者性についても言及している。この利他や当事者性といった概念は博士課程において「生きづらさ」や「弱さ」について研究を行なっていく上で、度外視できない要素であると考えているため、より詳細な調査を今後行なっていく予定である。

おわりに

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。私がそもそも男性学を研究してみようと思ったきっかけは学部のときに両親から大学の学費を払ってもらえず自分で賄う必要があって始めた「レンタル彼氏」という水商売に求められる「男らしさ」への違和感からでした。周りの同期は普通に大学へ行けるのに自分は行けないという社会から排除されたような気持ちが学部時代にはずっとあったのですが、様々なきっかけで出会った社会学を覗いてみるとそこでの色んな知見が自分ごとに捉えられ、そこから段々と自分はなんだかんだ社会のなかで生きてきてたんだなと感じられるようになり、その探求を求めて大学院へ進学しました。

自分の専門を男性学に定め調べてみたところメンズリブを知り、そして「うちゅうリブ」を知り、去年(2021年)に初めて参加させてもらいました。参加されたことのある方々ならきっと共感されると思うのですが、普段の男同士の会話では出てこないような自分の弱いところやしくじった経験の話など、人前で話すには恥ずかしいけどそれによって繰り広げられる会話が今までひた隠しにしてきた傷を優しく包んでくれるような気持ちを感じて、博士課程ではぜひこういったメンズリブの研究をしたいと思いました。そして、このような場の存在がもっと認知されて、一般に広まるといいなとも思っております。

上記では研究者としての配慮を記述致しましたが、会の最中は私も一参加者として皆さまとの対話のなかに参加できたらと思っております。宜しくお願い致します。

*1:現在所属している研究室は北村匡平研究室。研究室のHPがまだ作成されていないため、修士課程のURLを掲載しました。